そんな道を十分ばかり歩いてガソリン・スタンドの角を右に曲ると小さな商店街があり、真ん中あたりに「小林書店」という看板が見えた。たしかに大きな店ではなかったけれど、僕が緑の話から想像していたほど小さくはなかった。ごく普通の町のごく普通の本屋だった。僕が子供の頃、発売日を待ちかねて少年雑誌を買いに走っていったのと同じような本屋だった。小林書店の前に立っていると僕はなんとなくなつかしい気分になった。どこの町にもこういう本屋があるのだ。
『ノルウェイの森』村上春樹 講談社 1987
本屋さんの匂いっていいですよね。
紙の匂い、インクの匂い、少しだけ雨の匂いにも近いような気もします。
発売日を待ちかねてマンガや雑誌を買いに行くことって昔と比べて少なくなったような。
どこにでもありそうな町の風景って、今ではもうどこにでもは無いのかもしれませんね。
でもそういう風景って、体験していなくても懐かしいって思うことがあるんですよね。
あの感覚ってなんなんだろう。
神岡町は不思議な町で、日本有数の鉱山として一時代を築いた神岡鉱山の影響を受け今も歴史が見えるレトロな街並みが残っている反面、ノーベル賞を受賞したスーパーカミオカンデについての研究が行われる最先端の地でもある。
相反する面が共存しているけど、全体的にはどこか懐かしさを感じる町。
俯瞰で見る赤いトタン屋根がひしめき合う風景が素敵だなと思っています。
大津神社という神岡で一番大きい神社の麓には花街の名残があり、建物の造りも特徴のあるものが残っています。
そんな華やかな時代の雰囲気を残す点在する水屋や、家の合間を縫って続いている路地のような公道の街並み。
なんか刺さる部分がある町です。
旅をする時、「この町のこういうとこが自分の住んでいる町と似てる~」とか「こんな風景、地元にもあったなあ」とか思ったことってないですか?
そんなことを感じやすい風景がたくさんありそうな町です。
ちなみに小林書店って名前の本屋、神岡に本当に存在するんです。
実は小説のインスピレーションになっているかもしれません。
そんな想像をしながら歩いてみるのも旅の楽しさですね。
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